村松健本人が語る「ピアノ旅」 


 封じ込められた光と影
(埼玉県熊谷市星渓園にて)
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庭園の暮れなずむ季節に、古いスクエアピアノを持ち出して、
一音一音確かめる様に奏でる。
時の流れとともにとめどなく変化を繰り返す武蔵の街道沿いの街。
そのかたすみに、ほっとするような昔様の時間が残っていた。





 出逢いと別れ
(群馬県安中市安中教会にて)
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街道は物資ばかりでなく、文化や哲学も運んだ。
上州に生まれ中山道を行き来した新島譲(同志社の創立者)の故郷に
ひっそりとたたずむ瀟酒な教会。
暖かい響きの中で、アンティークなオルガンに触れた日。
一度限りの穏やかな瞬間…





 凍りつくよな晩に“木曽節”、とぼとぼ歩いてる、雪野っぱら
(長野県木曽福島町中山道沿いの民家にて)
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窓の外は降りしきる雪、木曽の真冬は驚く程の底冷え。
暖かい部屋の中でさえ、手がかじかんだっけ。
ここまで旅してきたその時の思いをピアノに託す。
真白い街道はまだまだ続いていく。





 夕なぎの記憶
(滋賀県大津市びわ湖ホールにて)
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三年の歳月ののち、京を前にしてたどり着いたこのたそがれ。
近江はおおうみ、ずっと内陸を行く中山道は、ここで満ち満ちた水の風景に出逢う。
やりとげた充足感と間もなく訪れる旅の終りの寂しさ。
旅は人生の様だ、ふと余韻の中にそう感じた。




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